「不安遺伝子」に沸くわたし。

NHK BS「英雄たちの選択」が好きで、たまに録画して観ている。

少し前、2020年放映分の再放送で、陰陽師安倍晴明を取り上げていた。

晴明といえば、わたしの中では美丈夫のスーパーヒーローというイメージ。

しかし、実際の晴明は、40歳でもまだ学生という、遅咲きの国家公務員だったらしい。

NHK大河「光る君へ」の初回オープニングだかの映像で、ユースケ・サンタマリアさん演じる安倍晴明を見て、美丈夫なヒーロー像とはおよそ真逆な姿にドン引きしたが(ユースケさん、ごめんなさい)、まあ、現実なんてそういうものよ、とつくづく思った。

 

番組内で最も印象に残ったのは、晴明の人となりからは離れてしまうが、脳科学者である中野信子さんの話。

どうして晴明のような陰陽師がこれほどまでに受け入れられていたのか、という疑問に対する一つの可能性として、日本人に多くみられる「不安遺伝子」なるものに触れていた。

不安遺伝子とは何ぞや、なんだけれど、、、

幸せホルモンと呼ばれるセロトニンという物質があって、これが脳内で分泌されると脳の興奮が抑えられて心身がリラックスし、幸福感を得られやすくなるらしい。

さらに、このセロトニンをリサイクルしてくれるセロトニン・トランスポーターというたんぱく質があって、これが多ければセロトニンも多くなり、少なければその逆になる。

そして、これが多いか、普通か、少ないかは遺伝子で決まるそうだ。

少ない人がもつ遺伝子を俗に「不安遺伝子」と呼び、多い人のそれを「楽観遺伝子」と呼ぶらしい。日本人は世界的にみても稀なほど不安遺伝子を持っている人の数が多く、およそ7割近くの人が保有しているとか。

ちなみにアメリカ人は2割に満たず、逆に楽観遺伝子をもつ人が多いらしい。

ポジティブ・シンキングというのは、心の持ちようだけでなんとかなるものではなく、案外、遺伝子に因るところも大きいのかもしれないなあ、なんて思ったりした。

 

中野さんは、この不安遺伝子が陰陽師のような存在を受け入れやすくしたのだろうという。

昔から自然災害に悩まされてきたこの国の人々にとって、星を読む人、陰陽師の存在は、それはそれは大きかったに違いない。日本人にこの遺伝子が多いのも、このような環境下でフィルターにかけられてきた結果ではないかという説もあるそうだ。

備えあれば憂いなし精神。

投資よりも貯金、賃上げより内部留保、いまならNISA株?・・・

もしかしたら、これらもまた不安遺伝子の為せる業なのかしら、なんて思ったり。

我が家だと、母の買い溜め。

防災意識が高まるずっと以前から、とにかく冷蔵庫の中が空っぽだと不安になるという。

わたしはあまり心配する質ではなかったけれど、能登半島地震後に買い溜め派になった。

水や食料品、防災リュックは既に備えていたけれど、新たに簡易トイレを購入したり、廊下の隅に底が厚めのスリッパを置いたり、袋に入れたままにしてあったライフジャケットを取り出して壁にかけたり等々、、備えの内容を見直した。

正直、古い家なので、大地震ともなれば家屋が潰れ、すべて無駄になるかもしれない。

それでも、万一、生き残った際に何もないのだけは避けたいと思う。

 

しかし、不安遺伝子のおかげで防災効果があがっているかどうかというハナシになると、また別のように思う。

というのも、先の台湾地震では、発生から三時間で避難所が開設されたらしい。

簡易パーティションも迅速に設置され、あっという間にプライバシーが守られる環境が整い、温かい食事もきちんと提供されたそうだ。

この地域では2018年にも地震があって、その際、間仕切りもない環境に置かれた住民から不満が噴出したとか。行政がその声をしっかり受け止め、民間団体や企業と共に災害への備えを進め、繰り返し訓練を行ってきたらしい。その成果が出たと関係者は語っていた。

もともと台湾の防災への備えは日本をお手本にしているという。1999年の台湾大地震後、日本の防災計画や自主防災組織の仕組みを学び取り入れてきたらしい。しかし、取り入れただけでこうはいかないだろう。当然、応用力や実行力などプラスアルファが期待通りの結果に繋げたのだと思う。

印象的だったのは、行政の担当者が、「行政の力は小さい」と仰っていたこと。

行政の力は小さいので、民間の団体や企業との協力が不可欠という。

足下をみても、その点にどれぐらい真剣に向き合えるかどうかというのはとても重要なことのように感じる。とはいえ、それを一個人が感じていても広域的総合的視点で考えるのは難しい話だし、そこが不明瞭だとなかなかアクションにまで至らない。やっぱりきっかけ作りや枠組み作りといった導入部分は行政が担ってほしいなと思う。

もっとぐいっと市民のなかに入ってきてくれるといいのだけれど... 月に一回、アナログな回覧板でまわされる、薄い広報誌のなかで発信しても、なかなか伝わりにくいと思う。

まあ、行うは難し、なんて言われたら何も言えないけれど。

今年は首長選があって、一期務めた現職に対抗馬が現れた。結構、手強そうだけれど、果たしてどうなるか。どちらも防災対策、少子化対策で看板は似たり寄ったり。

細かいところをよく見て投票したいと思う。

 

話がツツーッと逸れたが、きょうのキーワードは、あくまでも「不安遺伝子」。

身の回りのことや世の中のことをいちいち不安遺伝子に関連付けしてみると案外面白い。

 

さて、最後に、、、

先日のお昼時、身内からスマホにメッセージが届いた。

会社の近くに来ていたキッチンカーでオムライスを買ったらしい。

何かのグランプリで1位になったとか。

店先に並べられたメニュー写真には、ケチャップライスの上に乗せられたふくよかなオムレツの画像。

割るとトロリととろけるオムレツだろうか・・・

魅かれて買ったらしいが、会社で開けてびっくり、単なる白飯にトロトロじゃないオムレツが乗っていたそうだ。

オムライスならぬ、オムレツライスである(笑

添付のトマトソースはハインツのケチャップで味気ない。

しかも白いご飯には、別メニューの牛すじカレーのものと思しき肉の切れ端が入っていたとか・・・

オムレツライスと思って食べるのだと、励ました。

翌日はまた別のキッチンカーが来ていたらしいが、今度は最低でも1000円以上するハンバーグだったとか。

しかし、キッチンカーでは二度と買わないとのこと。

晴明じゃないけれど、キッチンカーってなんとなく安くて美味しそうなイメージだったのに、、、でもまあ現実なんてそういうものよ、なのかも。

設備的に制約も多そうだし、お店のようにはいかないのかな。