最近手にした幾冊かの本。

ここ最近、読んだ本。

伊坂幸太郎さんのゴールデンスランバー

池井戸潤さんのルーズヴェルト・ゲーム」「BT‘63」

そして、三浦しおんさんの「風が強く吹いている」

我が家の二階には、読書好きの母や姉が買い集めた本をぎゅうぎゅう押し込んだ書棚がある。いまでは専らキンドル利用の母たちに代わり、紙派のわたしの相手をすることが増えた本達。

紙がいい。ページをめくる高揚感に加え、終わりを感じながら読み進めるスリルは何とも言えない。紙本はある意味、高度な玩具のようである。

数日前の夜、そんな感覚を味わいながら読み終えたのが、伊坂さんのゴールデンスランバーだ。

衆人環視のなかで起きた首相暗殺事件。

目に見えない大きな力により、理不尽にも当該事件の犯人の濡れ衣を着せられる主人公、、、我が身に起こり得ないとは言い切れない、ある種のリアリティに背筋が凍る。

そんな悲劇の主人公の逃走劇という本筋に対して、それ以外のエピソードが多く、少々余計に感じたが、どうやらそれは意図的?だったらしい。

たしかに登場人物に厚みが増し、物語に深みが出たように思う。

ラストに向けては、終わってしまうのが惜しくて、少し戻っては読み返したりもした。

激流のなかを突き進むような話で、途方に暮れる横暴さに憤りや恐怖、歯がゆさを感じたりもしたけれど、救いがないわけではない。

大きいけれど非力な優しさが束になる。何度か泣かされそうになった。

 

池井戸さんは好きな作家。

ルーズヴェルト・ゲーム」は、経営危機に瀕する中堅メーカーと、そこの弱小社会人野球部の話。青息吐息の状況の中、それぞれがそれぞれの土俵で戦い抜く痛快ストーリー。

アタマを空っぽにして没頭できる娯楽本。悲しい話なんか読みたくない、嘘でもポジティブな話が読みたい人向け。そういう期待を裏切らない展開だから、安心しながらハラハラしたり、ドキドキしたり、涙腺を緩めたりすることができる。そして、納得の爽快な読後感。

たしかドラマ化されている。観てはいないけれど、映像化しやすい内容かもしれない。

でも、個人的には活字で読んだ方が面白いと思う。

 

「BT’63」は上下巻に分かれており、ボリューム的にも読み応えのある作品。

BTとはボンネットトラックのことで、63とは主人公の意識が行き来する1963年のことだと思う。

亡き父の遺品により、突如として若き日の父の意識と繋がり、彼の経験を共有することになった主人公の男性。物語は、心を病んだ男性の再生への物語と、若き日の父親の壮絶な物語が交錯する二重構造になっている。

企業を舞台に描いた池井戸経済小説とは異なる毛色の作品であり、おどろおどろしく、暴力的で、思わず読み飛ばしたくなるような凄惨なシーンも多い。苦手な人は苦手という要素も満載だが、それでも絶対に最後まで読んだほうがいい、ファンタジーだ。

帯に書いてある、「あの親父が歯を食いしばって生きている」という文字をはるかに超えた次元で父親は生きていた。それは気の毒なほど過酷なのだけれど、だからこそ心が震える。

寡黙で地味に思えた父親の凄まじい熱量に触れ、アグレッシブな一途さに胸打たれる。

川の底から砂金を取り出せたような感覚が残る。

 

三浦さんの「風が強く吹いている」は、箱根駅伝を題材にした作品。

ありがちなスポ根アニメというか、読み切りの青春漫画みたい。

活字の世界でこんなに簡単に物事を進めてほしくないと思いつつ読んでいたが、親の影響で子供の頃から箱根駅伝をテレビ視聴し続けてきたわたしである。ゴールシーンではリアルな実況がオーバーラップして、思わず涙腺が緩んでしまった。

箱根駅伝」には見えない力が宿っている。

とはいえ、全体的には拍子抜けの感が否めず、物足りなかった。

もともと初めて読んだ本がまったく合わなくて避けていた著者の作品。

ところが、母と姉は好きらしく、件のぎゅうぎゅう書庫には三浦さんの作品が幾冊もある。そして口を揃えて、あれ(わたしが初めて読んだ本)はたしかにつまらないけれど、他はおもしろいから!と言うので手に取ってみたのだ。

んー、、、

本だって、相性がある。