行方不明の読解力探しを手伝ってくれた先生のハナシ。

きょうの朝刊に「大雪」の文字。

本格的な冬へと移り変わるころだが、きょうは好天に恵まれ、気温も高く暖かな一日だった。

 

さて、OECDが実施している学習到達度調査、通称PISAの結果が公表された。

日本は、懸案の「読解力」が前回2018年調査の十五位から過去最高の三位と大幅に上昇したこともあり、メディアがこぞって取り上げている。

文科省国立教育政策研究所が公開している問題を試しに解いてみた(暇人である)。

モアイ像で知られるラパヌイ島(イースター島)に関する問題。

十五歳向けなので難しくはない。昔の国語の問題みたい。なつかしい。

今回の順位アップについては、手放しで喜べない点もあるようだ。

前回調査と同じ問題では正答率が変わらず、同問題に関する問いの中には、正答率わずか十四パーセントという低さのものもあったとか。

 

それはさておき、わたしがこのニュースに注目したわけは他にある。

奇しくも前日の晩、地元のケーブルテレビに高校時代の現代文の先生が出演していたのだ。

卒業して以来の御尊顔である。

先生の肩書は、他校と合併した母校の元校長となっていた。

髪は白く、限りなく薄くなり、お年も召していたが、顔はあまり変わっていない。

姓も覚えていたのですぐに分かった。

本当になつかしい。

先生は生徒と冗談を言い合うようなタイプではなく、物静かで穏やかな印象の方だった。

わたしにとっては現代文の先生以上でもなく、それ以下でもなかったのだが、こんなにもはっきりと覚えているのは、まさに「読解力」というものによるものだ。

学生の時分、わたしは「国語」という科目が得意だった。

得意というか、古文と漢文の単語の暗記以外、勉強というものをしたためしがないほど扱いやすい科目だった。

読解力を問う問題で迷ったことなどなく、いわば、点稼ぎの科目でもあった。

余談だが、代わりに数学は苦手で、因数分解しか解けなかったため、テストでも因数分解しか解かなかった。

あとは白紙。数学の先生に敵視されていた。

さて、得意の国語。

得意のはずだったが、ある日いきなりテストの問題が解けなくなった。

問いに対して解が見いだせない。

理由は分からないが、困ったわたしは、件の現代文の先生に相談した。

すると先生は、ひとつの課題を出してくれた。

それは新聞の社説を使う。

まずは家族に頼んで、社説の大見出しが分からないよう、切り取っておいてもらう。

つぎに大見出しのない文章を段落ごとに分けて、各々に小見出しをつける。

最後に自分なりに考えた大見出しをつけたら答え合わせ。

切り取っておいてもらった本当の大見出しと自分のものを照らし合わせる。

さらに翌日の放課後、切り取った社説を糊付けし、小見出しや大見出しが書き込まれたノートを手に先生を訪ね、段落分けや小見出しの内容などを含めて見ていただいた。

これが効果覿面。

無事、行方不明になっていた読解力が戻ってきた。

勘が戻って社説学習は終わりにしたが、先生への感謝と尊敬の念はいまも消えていない。

無駄のない的確な指導により、短期間でわたしに自信を取り戻させてくれた。

進路相談で担任と五分も話をしないひねくれた子供にとって、先生はとても頼もしい人だった。

 

たまたまみたその番組の中で先生は、某作家の一生について彼が抱えた病を絡めて話をしていた。

先生はときおり笑顔を見せ、じつに楽しそうに話をしていた。

そんな風に笑う先生を初めて見たような気がする。

先生がお元気そうで、なんだかとても嬉しかった。