youtubeの松竹シネマチャンネルで「時代屋の女房」という映画を観た。
1982年に直木賞を受賞した村松友視さんの同名の小説が原作。
歩道橋の脇で「時代屋」という名の骨董屋を営む男、ヤッサン。
ある日、ふらりと店に立ち寄ったのが、アブさんという名の猫を抱いた女、マユミ。
彼女はそのままヤッサンのもとに居付いてしまう。
素性の分からぬマユミとヤッサン、そして、彼らを取り巻く市井の人々を描く。
長編小説というより短編小説のような雰囲気。
ヤッサンを演じているのは渡瀬恒彦さん。
彼の店には、ぱっと見、価値があるのかないのかわからないような代物も並んでいる。
馴染みのクリーニング屋の奥さんが持ってきたいわくつきの古いトランク。
それでも、奥さんの顔がぱっと明るくなる程度の金額で買い取るヤッサン。
レトロ物が流行っているからというけれど、、、もしかしたらヤッサンは、価値がないようにみえるものの価値を見出してくれる人なのかも。
マユミを演じているのは夏目雅子さん。
彼女は行く先も帰る日も告げず、ときおりフラっといなくなる。
華やかな美しい顔立ちと浮世離れした雰囲気が役にぴったり。
マユミがいなくなるたびにマッサンは彼女の帰りをただひたすら待つ。
やがて、もう二度と帰ってこないだろうという展開になる。
これまで彼女の素性含めて余計な詮索はせず、すべてを受け入れていた風なヤッサンだったが、このまま失うかもしれないという段になって募る恋情と焦燥。小さな手がかりに縋り、彼女を探しに行った。
この作品のいちばん良いところは芸達者な役者が顔を揃えたところではないかな~。
渡瀬さんと夏目さんという豪華主演に加え、関西弁ばりばりの喫茶店のオーナー役に津川雅彦さん、ヤッサンの父親である高名なガラス工芸家の愛人役に朝丘雪路さん。
他にクリーニング屋を営む夫婦や、ヤッサンいきつけの居酒屋の夫婦などなど、お顔を拝見したら知ってる知ってるのオンパレードなんだけれど、とにかく上手い役者が揃っている。
最近の役者さんって平坦っていうか、個性がないっていうか、大根っていうか、個人的にはあんまり好みじゃないんだけれど、この時代の人達ってキャラが濃い。まず顔が濃い、っていうか似てないよね、誰かと。
そして、役作りが丁寧。
セリフ回しなんかも上手いしさ、短い出演時間でも個々のキャラクターの人間性が溢れて、作品に凹凸を与えている。
味わい深い短編小説って感じでとても良かった。
個人的にいちばん印象的だったのが、朝丘雪路さん。
もう最高。
作中、病気になった子供時代のヤッサンを介抱するシーンがある。
彼女を通して女性というものを意識し始めたような描き方で、、もしかしてヤッサンの初恋の人?だったのかも。
ヤッサンの実父を「先生」と呼び、ヤッサンにどうして親父との間に子供を作らなかったのかと訊かれて、先生と一緒になったときに子供を産めない身体にしたのよと言っていた。
どういう経緯で、また心境で、そう決断したのかはわからない。
結構、ショッキングな台詞なんだけれど、お涙ちょうだい的な弱々しさは無い。
かといってさばさばした感じもないんだよね、、。
忘れられない台詞がコレ。
「女ってね、別れるとき、男が自分のために傷ついていたらバンザイなんだよ。」
和装の喪服姿で、背中を見せて立ち去りながらさらりと言うセリフなんだけれど、格好良いんだ、これがまた。
痺れたね(笑)。この作品のなかでいちばん痺れたシーン。
わたしはもっとお年を召してからの朝丘雪路さんしか知らなくて、女優の顔よりバラエティーでおっとりした天然キャラを発揮し、人気を集めていた雪路さんの印象が強いのだけれど、こんなにも母性に溢れ、かつ、気風のいい女性の役が似合うとは(!)、まさに新発見。
こんな女性を演じられる人、他にいるかな~、、
なかなか思い浮かばない。
12月14日までyoutubeの「松竹シネマPLUSシアター」というチャンネルで無料公開中。
興味がある方はぜひ。
最後にごはんネタ。
母が作ってくれた豆腐グラタン。
クリームソースは無し。
木綿豆腐、塩鮭、お野菜、チーズだけ。
早朝、お布団のなかで眺めていたネットで見つけたレシピだそうです。
美味しかった~
わたしはいつも通り具沢山お味噌汁を作りましたよ。
左下に写っているのは、旅行で富山に行った母のお土産のホタルイカの沖漬け。
外箱を廃棄してしまったのでどちらのメーカーか分からないのだけれど、とっても美味しい。
富山では沖漬け二種類の他、スタンダードなイカの塩辛やイカのとんびの黒作りなど、また、他県では和菓子を買ってきてくれたのだけれど、富山の水産加工品のクオリティの高さに感激したわたし。
個人的にイカの塩辛はもっと甘口が良かったけれど、ホタルイカの沖漬けととんびの黒作りは最強。
いつもはごはんのお供にしているけれど、日本酒と一緒に口に含んだら、、これまた最高かも。
最後に冒頭の画像は近隣ウォーキングの際のもの。
自然っていつも素敵な姿を見せてくれて、ホント優しいよね。